コーヒービター:13後編

三人とも席…ではなくてクリスマスっぽくないけど、こたつに足を入れて食事をすることにした。
「いただきまー……んーなんかセンスないなぁー。何か音楽流すなりしようよ?」
とモモコが言ったので私はCDを置いているケースをごそごそと探し、一昨年ぐらいにテレビCMで宣伝されていたクリスマスボーカルソングCDを取り出した。
「これでいいかな?」
と私がたずねると二人ともコクリと頷いた。
 −We wish a merry……
よく聞く曲が最初流れ始めた。そうして、三人で食事を始めた。
控えめに流した音楽をバックに三人での談笑。最初はシャンメリーだったグラスもいつの間にかシャンパンに変わり、気分がよくなっていった。
歳が一歳足りない気がするけどこの際ほとんど誰も気にしない。もちろん二つ足りないイリスも。
それぞれ二人の顔を見ると、モモコは軽く酔いが入っているのか入っていないのか普段より少し饒舌だ。イリスはやっぱりお酒はほとんど飲んだことがないことが、顔の赤さからわかる。けど口調はいつも通りだ。
「テレビつける?」
私はそろそろクリスマスソングにも飽きてきてテレビを見るのを提案した。二人とも快諾した。
テレビをつけるとやはり、アメリカの有名女性歌手の曲が流れていた。さっき聞いたばっか。
そんな映像と音を流しつつ、再び食を進め一緒に話す口も進めた。口一丁手一丁といってもおかしくないかな、今の私たち。
「そういえば…」
と私は言いかけて止めた。言おうとしていたのは、クリスマスなのに家族と過ごさなくていいの?という質問。別に聞いてもよかったかもしれなかったけど、前に話したこととかを重く考えていたので、その考えはすぐに引っ込めた。
「どうしたの?アヤ。」
イリスは聞き返した。
「生チューいけるクチ?」
「なまこ?いけるわよ。」
案の定のボケをかましてくれた。…じゃなくて。
「おっと、ごめんごめん。チューハイチューハイ。生ビールっていうじゃない?じゃあなんでチューハイはあんまり生チューハイって言わないのかなって。だから敢えて私とかは、生チューって呼んでるのよ。」
なるほどね、とイリスは答えた。生チューユーザーがこれで一人増える…かも。
「まぁちょびちょびなら。」
「うん、じゃあ大丈夫ね。」
と私は用意しようとすると
「おぬしもわるよのー」
と笑いながらモモコは言った。うん、本当はいけないことなのよね。でも新人歓迎コンパでは飲まされるし、今のうちに…ね。
「いえいえお代官様こそ…」
と私も笑って返した。
そして、3本ほどの缶生チューを持ってきて、それぞれのグラスに注いだ。
「ダメだったら無理して飲まなくていいわよ。」
と私は一応の注意をしておいた。イリスは頷き、グラスを持った。そして立ち上がり乾杯の音戸を取った。
「寂しい子羊たちに幸あれ、乾杯。」
「「かんぱーい!」」
なんだかキリスト教徒のようなセリフで乾杯を取った。
そうして、それぞれ飲んだ。そして、最初に持ってきた生チューは三つとも空になった。
ある程度慣れている私とモモコは軽く顔を赤くしているだけだけど、イリスはそれなりに酔っているみたいだ。
「イリス、お水もってこようか?」
「…えぇお願いできる?」
と少し上気したような感じに答えた。
私は台所でコップに水を入れ一旦近くに置き、冷蔵庫のケーキを取り出した。
「ケーキどうするー?」
台所と扉越しにいる二人に声をかけた。
「食べよっかー?」
「えぇ、そうですね。」
と二人から反応が返ってきた。
「あっ、カットは私がするわ。」
とイリスが立ち上がり、こちらに向かってきた。心なしか足元がおぼついている。
「イリス、大丈夫?」
と私が声をかけると、「平気、平気」と言うが少し不安だ。
そう思ったのでケーキを水の隣に置いて、イリスの方を向いた時…
「あっ」
何かに引っかかりイリスは転びそうになった。
とっさに私は支えようと前に進むが、イリスのこっちに倒れ込む力が強く、一緒に倒れ込んでしまった。
「いたたたた…」
と仰向けに倒れていた私は目を開けると目の前に頬を赤く染めたイリスの顔があった。私の上に乗っかっているが、とても軽い。そして、イリスも大丈夫らしくこっちを見つめている。
「イリス大丈夫?」
と私が聞くと、どこかイリスの様子がおかしい。なんだかぽーっとしていて何故だか私の顔をずっと眺めている。
「おーい、イリスー?」
と私が聞くと、段々とイリスの顔が私の顔に近づいてきた。………ってわー!これはやばいって!
そうこう考えているうちに自然と私も酔っているせいかいいやという風に思ってきた。

 そうして、距離が0になった。

変な気持ちが心の中から生まれてくると同時に、イリスの匂いが鼻をくすぐった。



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管理人何やってるんだと思った人、その思いをコメントかWEB拍手で炸裂させて下さい。(何


これはもう長すぎましたね、中編作ってもよかったかもしれない。けど一気に書きたかったです。
これはあくまできっかけにすぎない。