コーヒービター:27

 二年目というのはあまり変わらない部分が多かった。
人間関係においては希薄になるのかと思ってたけど、むしろ逆に繋がりが強くなったと思う。高校時代以外での友人も増えてきた。
たまにキャンパス内でイリスを見かけることもあり、イリスもイリスで友達がちらほらとできているようだった。友達を見ると女の子だけだったけれども。
 しばらく一緒に帰る機会がなかったけど、今日は久々に帰る際に会ったので一緒に帰った。
「……桜の花びら散ってきたわね。」
車窓を望みながらイリスは憂いを帯びた表情で言った。
「あっという間よね。」
私も窓の向こう側を見た。窓枠の中からは大きい公園が見えて、そこの桜の木から花びらが舞っているのが見える。そして、ちらほらと緑色が見え始めているのが分かる。
最近は温暖化のせいか桜が咲き始めるのが3月半ばを過ぎたぐらいから開花宣言が為されている。咲いてからがとても早くて、4月に入ってちょっとするととっくに満開になったりと忙しない。
「桜が咲くといつもあの日のことを思い出すわ…」
「あの日って…?」
イリスは遠い目をしながら口を閉ざしている。唐突に言い出したもののイリスは何も言わない。
電車の扉が開き、私たちはホームに降りた。ずっと沈黙のままだ。改札を出てしばらくした人気のないところで急にイリスが振り返ると
「今時間ある?」
急に聞かれたので少しびっくりしたが「うん」と返答した。
「じゃあ私の家、来て。」
イリスの表情は初めて会ったときのようなクールな表情をしていた。
こういう形で初めてのイリスの家を訪問するとは思わなかった。


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